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●太陽光発電

藤井石根(明治大学)

●地球に降り注ぐ膨大なエネルギー

 環境負荷の大きい化石燃料、原子力に依存した大型の在来のエネルギーシステムを維持し、これからも可能な限りこの状況を続けようとする人達は、エネルギー供給に対する自然エネルギー活用の寄与度は極めて小さいものと見ています。日本のエネルギー関連予算配分を見ても大半は原子力発電関係に注ぎ込まれてきましたし、なおもこの傾向は変わりそうにありません。それでも彼等に言わせれば、仮に政府がエネルギー関係にこれまで投入してきた全ての金額を自然エネルギーの開発に振り向けてきたとしても、その効果は全エネルギー供給の精々三パーセント程度しか賄えない上、電気料金も今の二、三倍になるため非現実的であるとしています。太陽光発電についても、一次エネルギー供給量に対して、せいぜい一パーセントもカバーできれば成功と主張しています。そうした主張の根拠や条件は不明ですが、後世へのつけやエネルギー供給の持続性などは、果たしてどう考えているのでしょうか。
 さて、地球上に降り注ぐ太陽エネルギーは毎秒四二兆キロカロリー(以下、kcalと表示)にも達します。一kcalというエネルギー量が一リットルの水を摂氏一度上昇させるのに必要な熱量に相当することを考えると、四二兆kcalという量は莫大であることが実感できます。一九八八年度の世界の年間エネルギー総需要量の約一〇〇倍、エネルギー換算で石油需要量の二〇〇倍近くにもなります。日本全土では、降り注ぐ太陽エネルギーは毎秒一五〇億kcalと言われており、一九九〇年度の日本の一次エネルギー供給量の平均エネルギー消費量一.五億kcalと比較しても、全く不足を感じさせる量ではありません。

●太陽光発電の普及の実現性

 ただし、この多量な太陽エネルギーから電力を得ようとしても、季節、時間、場所そして天候などの影響を受けて、全てを利用できるわけではありません。気象庁が計測した日射量のデータによれば、日本全土平均で、一平方メートルの面積に一日当り三.八四キロワット時の日射エネルギー量があります。この日射量を利用して太陽電池発電システムで電力を得るとします。同システムの変換効率を一〇パーセントと仮定すれば、一日一平方メートル当り〇.三八キロワット時の電力が得られます。そこで、一九九〇年度の日本の年間総発電量約八六〇〇億キロワット時を太陽光発電だけで賄うという大胆な仮定をすれば、必要なシステム設置面積は、計算上、約六一〇〇平方キロメートルとなります。この広さは山口県の面積に相当します。一九九〇年比六パーセント減の発電量とすれば約五八〇〇平方キロメートルとなり愛知県の広さに相当します。現在、日本にあるゴルフ場の総面積は神奈川県の広さ(二四〇〇平方キロメートル)と言われていますので、その約二.四倍の広さということになります。
 ところで筆者の家では、昨年、電力会社に売電できる太陽光発電設備を設置しました。公称の発電設備容量は三キロワットで、設置費用は工事費その他を含めて一キロワット当り約一〇〇万円でしたから、合計約三〇〇万円の費用で収めることができました。屋根上に取り付けられた太陽光発電装置の様子は写真で見る通りです。この写真では良く判りませんが、太陽光発電装置の裏面と屋根面との間には空気が流れる隙が設けられているので、ここに風が通ることで、太陽光発電装置と屋根から熱が奪われることになります。これによって太陽電池の発電効率が高まるだけでなく、屋根の温度が下がるので、夏期の冷房の負荷が軽減され省エネルギーにも寄与します。本格的な発電は一九九八年九月一三日に始まり、電力会社への逆潮流も始まりました。夜間や発電量の少ない時間には電力を買いますが、昼間には余った電気を電力会社に売ることができます。
太陽光発電設備設置後は電力の売電量はほぼ均衡していること。また、日照のある発電時といえども、必要な電力は消費しており、これは当然、太陽光の発電で賄われています。その量はここでは計測されていないので定かでないが、もし、これが太陽光発電の有り無しの同じ月の購入電力量の差で見るならば、この差とその月の余剰電力売電量との和が、同月のおよその太陽光発電量と見積もることができます。これを計算してみると、一九九八年九月では二五四キロワット時となり、以下順次、各月の発電量を平均すると、この設備の設置によって月平均二三〇キロワット時程度、年間約二七〇〇キロワット時の発電がされている、ということになります。
 もし日本の全世帯数の半分、約二千万世帯が三キロワットの太陽光発電設備を設置したとすれば、年間約五四〇億キロワット時の電力が得られることになります。この量は既に示した日本の一九九〇年度の総発電量八五七二億キロワット時の六パーセントを遥かに越えています。投資金額は一キロワット当りの設置価格一〇〇万円としても六〇兆円。しかし、これほどの設備を蓄えることになれば量産の効果が働いて、その半分以下の金額で収まることになるでしょう。停滞気味の現在の経済状況を活性化させ、同時に電力という貴重な富を確実に手にすることができます。加えて、放射性廃棄物や温暖化影響などの負の遺産もほとんど残さず環境の保全にも寄与します。しかも、エネルギー資源の枯渇という心配からも少なからず開放されることになります。こうして見ると、このようなお金の使い方こそ活きた使い方と言えないでしょうか。今、わたしたちに求められていることはこうした考え方を優先させ、着々と実行に移していくことでではないでしょうか。

 

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