自然エネルギー発電促進法(案)
目次
第一章 総則(第一条―第六条)
第二章 国の供給目標(第七条)
第三章 自然エネルギー発電の認定(第八条)
第四章 自然エネルギー発電による電気の供給(第九条―第十三条)
第五章 補助(第十四条・第十五条)
第六章 自然エネルギー発電審議会(第十六条―第二十五条)
第七章 雑則(第二十六条・第二十七条)
第八章 罰則(第二十八条―第三十一条)
附則
第一章 総則
(目的)
第一条 この法律は、自然エネルギー発電を促進するための措置を講ずることにより、枯渇しないエネルギー資源の有効な利用及び温室効果ガスの排出の抑制による地球温暖化の防止を図り、もって環境への負荷の少ない健全な経済の発展を図りながら持続的に発展することができる社会を構築することに資することを目的とする。
(定義等)
第二条 この法律において「自然エネルギー発電」とは、次に掲げる発電をいう。
一 太陽光発電
二 風力発電
三 小水力発電(河川法(昭和三十九年法律第百六十七号)第四十四条第一項に規定するダムを伴わない水力発電設備であって政令で定める出力以下のものによる発電をいう。)
四 バイオマス発電(農業、林業又は製材業において副産物又は廃物として生ずるわら、家畜の排せつ物、木くずその他の有機物を全部又は大部分とする有機物(当該有機物から得られる液体又は気体を含む。)を燃料として利用して行う発電をいう。)
五 前各号に掲げるもののほか、自然現象又は生物体に由来する枯渇しないエネルギー資源を利用する発電であってその促進を図ることが前条の目的に照らし特に必要なものとして政令で定めるもの
2 経済産業大臣は、前項第三号又は第五号の政令の制定又は改廃の立案をしようとするときは、環境大臣に協議するとともに、自然エネルギー発電審議会の意見を聴かなければならない。
3 この法律において「一般電気事業者」とは、電気事業法(昭和三十九年法律第百七十号)第二条第一項第二号に規定する一般電気事業者をいう。
(国の責務)
第三条 国は、自然エネルギー発電を促進するために必要な資金の確保その他の措置を講ずるよう努めなければならない。
2 国は、自然エネルギー発電に係る安定供給、効率化、費用の低減等のための研究開発の実施及びその成果の普及に努めなければならない。
3 国は、教育活動、広報活動等を通じて、自然エネルギー発電の促進に関する国民の理解を深めるよう努めなければならない。
(地方公共団体の責務)
第四条 地方公共団体は、その区域の自然的社会的条件に応じた自然エネルギー発電の促進のための施策を推進するよう努めなければならない。
(一般電気事業者の責務)
第五条 一般電気事業者は、自ら自然エネルギー発電を行い、又は自然エネルギー発電による電気を買い取ることその他自然エネルギー発電による電気の供給を促進する措置を講ずるよう努めなければならない。
(年次報告)
第六条 政府は、毎年、国会に、自然エネルギー発電の状況及び政府が自然エネルギー発電の促進に関して講じた施策に関する報告書を提出しなければならない。
2 政府は、毎年、前項の報告に係る自然エネルギー発電の状況を考慮して講じようとする施策を明らかにした文書を作成し、これを国会に提出しなければならない。
第二章 国の供給目標
第七条 経済産業大臣は、自然エネルギー発電の促進の見地から、自然エネルギー発電による電気の供給目標(以下この条及び第九条において「供給目標」という。)を定め、これを公表しなければならない。
2 供給目標は、自然エネルギー発電の種類ごとの電気の供給量の目標、自然エネルギー発電による電気の供給量が電気の総供給量に占める割合の目標その他自然エネルギー発電による電気の供給に関する事項について、地球温暖化対策の推進に関する法律(平成十年法律第百十七号)第七条第一項の地球温暖化対策に関する基本方針、自然エネルギー発電に係る技術水準その他の事情を勘案して定めるものとする。
3 経済産業大臣は、供給目標を定めるときは、環境大臣に協議するとともに、自然エネルギー発電審議会の意見を聴いて、閣議の決定を経なければならない。
4 政府は、前項の規定により決定された供給目標を、国会に提出して、その承認を受けなければならない。
5 政府は、第二項の事情の変動のため必要があるときは、供給目標を改定するものとする。
6 第一項から第四項までの規定は、前項の規定による供給目標の改定について準用する。
第三章 自然エネルギー発電の認定
第八条 次項の認定を受けようとする者は、経済産業省令で定めるところにより、経済産業大臣に認定を申請しなければならない。
2 経済産業大臣は、前項の申請に係る発電が政令で定める基準に適合するときは、当該発電が自然エネルギー発電である旨の認定をしなければならない。
3 経済産業大臣は、前項の認定を受けた発電が同項の基準に適合しなくなったとき、又は第一項の者が偽りその他不正の手段により前項の認定を受けたときは、その認定を取り消すことができる。
4 経済産業大臣は、第二項の政令の制定又は改廃の立案をしようとするときは、自然エネルギー発電審議会の意見を聴かなければならない。
5 第二項の認定については、前各項の規定によるほか、経済産業省令で定めるところによる。
第四章 自然エネルギー発電による電気の供給
(自然エネルギー発電供給促進計画)
第九条
一般電気事業者は、供給目標を踏まえ、経済産業省令で定めるところにより、毎年度、当該年度以
降経済産業省令で定める期間における自然エネルギー発電(前条第二項の認定を受けたものに限る。以下
第十五条まで及び第二十六条において同じ。)による電気の供給の促進についての計画(次項及び第三項において「計画」という。)を作成し、当該年度開始前に、経済産業大臣に届け出なければならない。
2 一般電気事業者は、計画を変更したときは、遅滞なく、変更した事項を経済産業大臣に届け出なければならない。
3 経済産業大臣は、供給目標に照らし計画の内容又はその実施が著しく不適切であると認めるときは、計画を作成した一般電気事業者に対し、その変更又は適切な実施に関し、勧告をすることができる。
(買取り約款)
第十条 一般電気事業者は、自然エネルギー発電の種類ごとに、その電気の買取りに係る料金、期間その他の買取り条件について、経済産業省令で定めるところにより、買取り約款を定め、経済産業大臣に届け出なければならない。これを変更しようとするときも、同様とする。
2 一般電気事業者は、前項の買取り約款を定めるに当たっては、自然エネルギー発電の促進に資するよう配慮するものとする。
3 経済産業大臣は、第一項の規定による届出に係る買取り約款が次の各号のいずれかに該当しないと認めるときは、当該一般電気事業者に対し、相当の期限を定め、その買取り約款を変更すべきことを命ずることができる。
一 買取りの料金が定率又は定額をもって明確に定められていること。
二 一般電気事業者及び自然エネルギー発電を行う者(以下「発電者」という。)の責任に関する事項並びに第八条第二項の認定を受けた発電に係る設備(第十四条において「認定設備」という。)の一般電気事業者の電力系統への連系(以下「系統連系」という。)の費用の負担の方法が適正かつ明確に定められていること。
三 特定の者に対して不当な差別的取扱いをするものでないこと。
四 発電者に不当に不利益となるおそれがないこと。
4 一般電気事業者は、第一項の規定による届出をしたときは、その届出に係る買取り約款をその実施の日の十日前から、営業所及び事務所において、公衆の見やすい箇所に掲示しておかなければならない。
5 経済産業大臣は、一般電気事業者が第一項の規定による届出に係る買取り約款に定める買取り条件以外の条件で自然エネルギー発電による電気の買取りを行うことにより、発電者に不当に不利益となるおそれがあると認めるときは、当該買取り約款に定める買取り条件によるべきことを命ずることができる。
6 発電者がその自然エネルギー発電について電気事業法第二条第一項第十一号に規定する卸供給を行う場合における同法第二十二条第一項の規定の適用については、同項ただし書中「次に掲げる場合」とあるのは、「次に掲げる場合又は自然エネルギー発電促進法(平成十二年法律第 号)第十条第一項の規定による届出に係る買取り約款で定める買取り条件に応じた供給条件による場合」とする。
(技術上の指針)
第十一条 経済産業大臣は、系統連系に関し発電者及び一般電気事業者がよるべき技術上の指針(以下この条において「指針」という。)を定めるものとする。
2 指針は、自然エネルギー発電が円滑に促進されるよう十分配慮して定められなければならない。
3 経済産業大臣は、指針を定めるときは、自然エネルギー発電審議会の意見を聴かなければならない。
4 経済産業大臣は、指針を定めたときは、これを公表しなければならない。
5 経済産業大臣は、自然エネルギー発電に係る技術水準その他の事情を勘案し、必要があると認めるときは、指針を改定しなければならない。
6 第二項から第四項までの規定は、前項の規定による指針の改定について準用する。
(当事者間の協議)
第十二条 発電者は、系統連系に関し必要な措置及び費用負担について、一般電気事業者に協議を求めることができる。
2 一般電気事業者は、前項の協議に当たっては、自然エネルギー発電の促進を阻害することのないよう配慮するものとする。
(調停)
第十三条 前条第一項の協議の当事者の双方又は一方は、同項の協議をすることができず、又は協議が調わないときは、経済産業大臣に対し、調停を申請することができる。
2 経済産業大臣は、前項の申請を相当と認めるときは、政令で定めるところにより、自然エネルギー発電審議会による調停に付するものとする。
第五章 補助
(認定設備の設置の補助)
第十四条 国は、政令で定めるところにより、認定設備(系統連系に必要な設備を含む。)を設置する者に対し、予算の範囲内において、その設置に要する費用の二分の一以内を補助することができる。
(一般電気事業者に対する補助)
第十五条 国は、一般電気事業者に対し、政令で定めるところにより、自然エネルギー発電による電気の買取りによって負担することとなる費用について、予算の範囲内において、必要な補助を行うことができる。
第六章 自然エネルギー発電審議会
(設置)
第十六条 経済産業省に、自然エネルギー発電審議会(以下「審議会」という。)を置く。
(所掌事務)
第十七条 審議会は、次に掲げる事務をつかさどる。
一 この法律の規定によりその権限に属させられた事項を処理すること。
二 経済産業大臣の諮問に応じて自然エネルギー発電の促進に関する重要事項を調査審議すること。
(組織)
第十八条 審議会は、自然エネルギー発電を行う者を代表する委員、一般電気事業者を代表する委員及び自然エネルギー発電の促進に関し学識経験を有する者である委員(以下「学識経験者委員」という。)各五人をもって組織する。
2 委員は、非常勤とする。
(会長)
第十九条 審議会に会長を置く。会長は、学識経験者委員のうちから委員が選挙する。
2 会長は、会務を総理し、審議会を代表する。
3 審議会は、あらかじめ、会長に事故があるときにその職務を代理する学識経験者委員を定めておかなければならない。
(委員の任命)
第二十条 委員は、経済産業大臣が、任命する。
2 学識経験者委員の任命については、両議院の同意を得なければならない。
3 学識経験者委員の任期が満了し、又は欠員が生じた場合において、国会の閉会又は衆議院の解散のために両議院の同意を得ることができないときは、経済産業大臣は、前項の規定にかかわらず、学識経験者委員を任命することができる。
4 前項の場合においては、任命後最初の国会で両議院の事後の承認を得なければならない。この場合において、両議院の事後の承認を得られないときは、経済産業大臣は、直ちにその学識経験者委員を罷免しなければならない。
5 経済産業大臣は、学識経験者委員を任命するに当たっては、自然エネルギー発電の促進を目的とする市民活動を行う団体を代表する者であって適当なものが含まれるよう努めなければならない。
(委員の任期)
第二十一条 委員の任期は、二年とする。ただし、補欠の委員の任期は、前任者の残任期間とする。
2 委員は、再任されることができる。
(学識経験者委員の罷免)
第二十二条 経済産業大臣は、学識経験者委員が心身の故障のため職務の遂行ができないと認める場合又は学識経験者委員に職務上の義務違反その他委員たるに適しない非行があると認める場合においては、両議院の同意を得て、これを罷免することができる。
(学識経験者委員の服務)
第二十三条 学識経験者委員は、職務上知ることのできた秘密を漏らしてはならない。その職を退いた後も同様とする。
2 学識経験者委員は、在任中、政党その他の政治的団体の役員となり、又は積極的に政治運動をしてはならない。
(委員の給与)
第二十四条 委員の給与は、別に法律で定める。
(政令への委任)
第二十五条 第十六条から前条までに規定するもののほか、審議会の組織、所掌事務及び委員その他の職員その他審議会に関し必要な事項は、政令で定める。
第七章 雑則
(報告の徴収)
第二十六条 経済産業大臣は、この法律の施行に必要な限度において、政令で定めるところにより、発電者に対し、その自然エネルギー発電の状況について報告を求めることができる。
2 経済産業大臣は、この法律の施行に必要な限度において、政令で定めるところにより、一般電気事業者に対し、その自然エネルギー発電による電気の供給の状況について報告を求めることができる。
(経過措置)
第二十七条 この法律の規定に基づき命令を制定し、又は改廃する場合においては、その命令で、その制定又は改廃に伴い必要と判断される範囲内において、所要の経過措置(罰則に関する経過措置を含む。)を定めることができる。
第八章 罰則
第二十八条 第二十三条第一項の規定に違反して秘密を漏らした者は、一年以下の懲役又は三万円以下の罰金に処する。
第二十九条 第十条第三項又は第五項の規定による命令に違反した者は、三百万円以下の罰金に処する。
第三十条 次の各号のいずれかに該当する者は、三十万円以下の罰金に処する。
一 偽りその他不正の手段により第八条第二項の認定を受けた者
二 第九条第一項若しくは第二項又は第十条第一項の規定による届出をせず、又は虚偽の届出をした者
三 第十条第四項の規定に違反した者
四 第二十六条第一項又は第二項に規定する報告をせず、又は虚偽の報告をした者
第三十一条 法人の代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の従業者がその法人又は人の業務に関し、前二条の違反行為をしたときは、行為者を罰するほか、その法人又は人に対して、各本条の刑を科する。
附 則
(施行期日)
第一条 この法律は、平成十三年四月一日から施行する。ただし、第六章並びに附則第四条、第六条及び第八条の規定は、同年一月六日から施行する。
(検討)
第二条 政府は、この法律の施行後五年以内に、この法律の施行の状況及び電気事業の自由化の進展、自然エネルギー発電に係る技術の発展その他の社会経済情勢の推移を勘案し、自然エネルギー発電に係る費用についての社会全体による適正かつ公平な負担の在り方を含め、自然エネルギー発電を促進するための制度について総合的に検討を加え、その結果に基づいて必要な措置を講ずるものとする。
(経過措置)
第三条 平成十三年六月三十日までの間における第十条第一項の規定の適用については、同項中「、その電気」とあるのは「、平成十三年六月三十日までに、その電気」とする。
(特別職の職員の給与に関する法律の一部改正)
第四条 特別職の職員の給与に関する法律(昭和二十四年法律第二百五十二号)の一部を次のように改正する。
第一条第十九号の十二の次に次の一号を加える。
十九の十三 自然エネルギー発電審議会の自然エネルギー発電の促進に関し学識経験を有する者である委員
(電源開発促進対策特別会計法の一部改正)
第五条 電源開発促進対策特別会計法(昭和四十九年法律第八十号)の一部を次のように改正する。
第一条第三項第三号の次に次の一号を加える。
三の二 自然エネルギー発電促進法(平成十二年法律第 号)の規定に基づいて行う補助
(経済産業省設置法の一部改正)
第六条 経済産業省設置法(平成十一年法律第九十九号)の一部を次のように改正する。
第四条第一項第五十号の次に次の一号を加える。
五十の二 自然エネルギー発電の促進に関すること。
第十八条第二項中「石炭鉱業審議会」を「次のとおり」に改め、同項に次のように加える。
自然エネルギー発電審議会
石炭鉱業審議会
第十九条の次に次の一条を加える。
(自然エネルギー発電審議会)
第十九条の二 自然エネルギー発電審議会については、自然エネルギー発電促進法(平成十二年法律第号。これに基づく命令を含む。)の定めるところによる。
(石炭鉱業の構造調整の完了等に伴う関係法律の整備等に関する法律の一部改正)
第七条 石炭鉱業の構造調整の完了等に伴う関係法律の整備等に関する法律(平成十二年法律第十六号)の一部を次のように改正する。
附則第二十九条を次のように改める。
(経済産業省設置法の一部改正)
第二十九条 経済産業省設置法(平成十一年法律第九十九号)の一部を次のように改正する。
第十八条第二項を次のように改める。
2 前項に定めるもののほか、別に法律で定めるところにより経済産業省に置かれる審議会等で資源エネルギー庁に置かれるものは、自然エネルギー発電審議会とする。
第二十条を削り、第四章第二節第二款中第十九条の二を第二十条とする。
(アルコール事業法の一部改正)
第八条
アルコール事業法(平成十二年法律第三十六号)の一部を次のように改正する。
附則第三十三条を次のように改める。
(経済産業省設置法の一部改正)
第三十三条
経済産業省設置法(平成十一年法律第九十九号)の一部を次のように改正する。
第四条第一項中第三十八号を削り、第三十九号を第三十八号とし、第四十号から第五十号までを一号ずつ繰り上げ、第五十号の二を第五十号とする。
第十二条第二項中「第四十九号」を「第四十八号」に改める。
第十七条中「第四十三号、第四十六号、第四十九号」を「第四十二号、第四十五号、第四十八号」に改める。
理 由
自然エネルギー発電を促進するための措置を講ずることにより、枯渇しないエネルギー資源の有効な利用及び温室効果ガスの排出の抑制による地球温暖化の防止を図り、もって環境への負荷の少ない健全な経済の発展を図りながら持続的に発展することができる社会を構築することに資することとする必要がある。これが、この法律案を提出する理由である。
この法律の施行に伴い必要となる経費
この法律の施行に伴い必要となる経費は、平年度約 円の見込みである。